GPTにSTP分析を行わせる手法を実践を交えながら解説!プロンプト例文も紹介!
LLM(大規模言語モデル)の中でも圧倒的知名度を誇るのが、OpenAI社の開発したGPTモデルです。
今回は、そんなGPTモデルにSTP分析を行わせるプロンプト(AIへの指示文)を紹介しますので、ぜひご参考になさってください。
関連記事:プロンプト集「プロンプトパーク」とは?他のサービスにはないメリットを紹介!
INDEX
STP分析とは
STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つの英単語の頭文字から名付けられたマーケティング戦略のフレームワークです。
具体的には以下のようなものを指します。
セグメンテーション(Segmentation:市場細分化)
市場全体を、共通のニーズや購買行動を持つグループに分割します。
- 人口統計的変数:年齢、性別、職業、学歴、家族構成など
- 地理的変数:居住地域、都市規模、気候など
- 心理的変数:価値観、ライフスタイル、性格、興味・関心など
- 行動変数:購買頻度、利用量、ブランドロイヤルティなど
これらの要素を組み合わせることで、より詳細な市場セグメントを作成できます。
ターゲティング(Targeting:ターゲット市場)
セグメント化した市場の中で、自社の製品やサービスに最も適したターゲット市場を選択します。
- 市場規模:ターゲット市場の規模
- 成長性:ターゲット市場が成長しているか、将来的に成長が見込めるか
- 競争状況:ターゲット市場における競争状況
- 到達可能性:ターゲット市場に効率的にリーチできるかどうか
ポジショニング(Positioning:自社の立ち位置の明確化)
ターゲット市場における自社の立ち位置を明確化します。
- 競合他社との差別化:競合他社との比較において、自社の製品やサービスのどのような点が優れているのかを明確化
- 顧客のニーズへの対応:ターゲット市場のニーズにどのように対応していくのかを明確にします。
- ブランドイメージ:自社のブランドイメージをどのように構築していくのかを明確にします。
STP分析をGPTで行う上でのデメリット
GPTモデルに限らず、外的要因に関しては精度の高い分析を行うことが可能です。
しかし、STP分析のような内的要因があるものに関しては、自社の会社について教えてあげる必要があります。
RAG(検索拡張生成:簡単に言うとAIがWEBアクセスして情報を収集すること)を使用すれば精度は上がるものの、固有名詞に弱い所があることは否めません。
関連記事:RAG(検索拡張生成)とは?LLMをさらに活用する方法を解説!
デメリットを回避するためにダミーデータを使用する
自社のデータを学習させることで、精度は上がりますが抵抗のある企業も多いのではないでしょうか。
そこでよく用いられるのが「自社によく似た企業をダミーで作成して分析を行う」という手法です。
これで機密情報などは隠したまま分析を行うことができます。
今回の紹介も、以下の記事で作成したダミーデータで行います。
関連記事:何も考えたくない時にChatGPTにダミーデータを作成させるプロンプト(例文つき)
具体的には以下のような企業情報です。
- 会社名: 株式会社 翔風イノベーションズ
- 業種: 情報技術と人工知能
- 住所: 東京都港区六本木一丁目
- 連絡先: 03-XXXX-XXXX
- 年間売上高: 50億円
- 設立年月日: 2016年4月1日
- 会社概要: 株式会社 翔風イノベーションズは、人工知能と機械学習を利用したビジネスソリューションを提供するIT企業です。最先端の技術を活用して、企業のデータ分析、自動化、およびプロセス改善を支援しています。
- 製品またはサービスの概要: 主な製品には、ビッグデータ分析ツール「CloudSight」、AIによる顧客対応システム「AI Customer Assistant」、自動化されたマーケティング分析プラットフォーム「MarketMind」があります。
STP分析プロンプト
上記の架空の企業で「AIによる顧客対応システム」がどのような市場でどのような立ち位置となりうるのか以下のプロンプトで検証します。
関連記事:ビジネス用GPTプロンプト集10選!コピペ可例文付きで紹介
#前提:
あなたは過去3,000社のマーケティング支援を行なってきた優秀なマーケティングコンサルタントです。
#指示:
以下の{企業} の{新商品} についてSTP分析を行なってください。
{出力フォーマット} に従って出力してください。
注釈や繰り返しは不要です。結果のみ出力してください。
#出力フォーマット:
S(セグメンテーション):
S(セグメンテーション)を判断した理由:
T(ターゲット市場):
T(ターゲット市場)を判断した理由:
P(ポジショニング):
P(ポジショニング)を判断した理由:
#企業:
"""
(ここに入力)
"""
#新商品:"(ここに入力)"
上記の(ここに入力)の欄に、上記のダミーデータを入れてみます。
#前提:
あなたは過去3,000社のマーケティング支援を行なってきた優秀なマーケティングコンサルタントです。
#指示:
以下の{企業} の{新商品} についてSTP分析を行なってください。
{出力フォーマット} に従って出力してください。
注釈や繰り返しは不要です。結果のみ出力してください。
#出力フォーマット:
S(セグメンテーション):
S(セグメンテーション)を判断した理由:
T(ターゲット市場):
T(ターゲット市場)を判断した理由:
P(ポジショニング):
P(ポジショニング)を判断した理由:
#企業:
"""
会社名: 株式会社 翔風イノベーションズ
業種: 情報技術と人工知能
2022年度年間売上高: 50億円
設立年月日: 2016年4月1日
会社概要: 株式会社 翔風イノベーションズは、人工知能と機械学習を利用したビジネスソリューションを提供するIT企業です。最先端の技術を活用して、企業のデータ分析、自動化、およびプロセス改善を支援しています。
製品またはサービスの概要: 主な製品には、ビッグデータ分析ツール「CloudSight」、自動化されたマーケティング分析プラットフォーム「MarketMind」があります。
"""
#新商品:"AIによる顧客対応システム「AI Customer Assistant」"
住所とかはおそらく不要なので、カットしています。
また、今回は「AIによる顧客対応システム」が誕生していない設定なので新商品の欄に移行しています。
S(セグメンテーション): 中小企業〜大企業までの幅広い規模のビジネス、特にカスタマーサービスやサポートを重視している企業。業種は小売、金融、通信、ITなど顧客接点が多い分野。
S(セグメンテーション)を判断した理由: 「AI Customer Assistant」が顧客対応の自動化と最適化を実現する製品であるため、大量の顧客照会に迅速かつ効率的に対応する必要がある企業に最もメリットが大きいと考えられるからです。
T(ターゲット市場): 特に中規模企業の小売および金融セクターが強い顧客サービス需要を持ちつつ、すでにデジタル化の基盤を持っており、AI技術の統合をスムーズに行える企業群。
T(ターゲット市場)を判断した理由: 中規模企業は大企業に比べて決定プロセスが迅速かつ柔軟であり、新技術の採用に関して大きなメリットを享受できるポテンシャルがあるため。小売および金融業界は顧客対応の質が競争優位性に直結するため、AIの導入による品質向上と効率化が期待される。
P(ポジショニング): 「株式会社 翔風イノベーションズ」の「AI Customer Assistant」は、顧客満足度を高めると同時に、操作性の高さとコスト効率を兼ね備えた、中規模企業向けの顧客サービス革新ツールとしてポジショニングする。
P(ポジショニング)を判断した理由: 「株式会社 翔風イノベーションズ」が提供する先進のAI技術と、過去の成功事例に基づく信頼性、利便性をアピールすることで差別化を図り、特に人材不足やコスト削減に課題感を持つ中規模企業のニーズに応えるポジショニングが適切であるためです。
プロンプトパーク(GPT-4)
STP分析の目的
ここではそもそものSTP分析の目的を紹介します。
主に以下の3点が目的です。
- マーケティング戦略の策定:市場全体を捉えるのではなく、ターゲット市場に焦点を絞ることで、より効率的なマーケティング戦略を策定することができます。
- マーケティング資源の効率的な配分:限られたマーケティング資源を、最も効果的なターゲット市場に集中させることができます。
- 競争優位性の確立:競合他社との差別化を図り、自社の立ち位置を明確にすることで、競争優位性を確立することができます。
STP分析のメリット
上記の3点の目的から、以下のメリットがあります。
- 市場全体の理解を深めることができる
- ターゲット市場に焦点を絞ることで、より効率的なマーケティング活動を行うことができる
- 競合他社との差別化を図り、競争優位性を確立することができる
GPTの回答の精度をあげるプラスワンプロンプト
上記のような結果が得られましたが、どこか無難すぎる印象を受けた方も多いのではないでしょうか。
そのような時に、一言付け加えるだけで回答の精度を挙げるプロンプトを2つ紹介します。
MECEプロンプト
MECEとは「漏れなくダブりなく」と言った意味で包括的な指標を網羅してくれます。
上記プロンプトに「MECEに考えてください」と一言付け加えるだけです。
関連記事:GPTにMECEな考え方をさせて回答の精度をあげるプロンプトを例文付きで紹介
#前提:
あなたは過去3,000社のマーケティング支援を行なってきた優秀なマーケティングコンサルタントです。
#指示:
以下の{企業} の{新商品} についてSTP分析を行なってください。
{出力フォーマット} に従って出力してください。
MECEに考えてください。
注釈や繰り返しは不要です。結果のみ出力してください。
#出力フォーマット:
S(セグメンテーション):
S(セグメンテーション)を判断した理由:
T(ターゲット市場):
T(ターゲット市場)を判断した理由:
P(ポジショニング):
P(ポジショニング)を判断した理由:
#企業:
"""
(ここに入力)
"""
#新商品:"ここに入力"
S(セグメンテーション):
- 中小企業
- 大企業
- ITを活用した顧客サービスを強化したい企業
- カスタマーサポートのコスト削減を目指している企業
- 24時間365日体制で顧客対応をしたい企業
S(セグメンテーション)を判断した理由: 企業の規模や経済力、ビジネスの現状やニーズ、サービスの提供可能性によって顧客層を細分化し、適切なターゲットにアプローチするため。
T(ターゲット市場):
- ITを活用したカスタマーサポートの品質向上を図りたい中小企業
- サポート業務の効率化とコスト削減を目指す大企業
T(ターゲット市場)を判断した理由: 中小企業は柔軟な導入とコストの負担が小さい点が魅力的です。大企業はサポート業務の規模やコスト削減が課題であるため、AIシステムの高効率な対応能力を必要としています。
P(ポジショニング): 「AI Customer Assistant」はコスト効率に優れ、オールインワンのカスタマーサポート解決ツールとして高度なAI技術を提供します。企業のサポート体制を24時間365日対応可能にし、顧客満足度の向上を実現します。
P(ポジショニング)を判断した理由: 市場において「AI Customer Assistant」を明確に差別化し、顧客のニーズに合わせた専門的なソリューションとしての価値を提案するため。顧客対応の質と効率の向上を経営課題とする企業にアピールします。
プロンプトパーク(GPT-4)
長くなりますが、箇条書きで出してくれたりと結構親切な上に精度は上がっている気がします。
メタ認知プロンプト(MP)
メタ認知とは「自分の回答が本当に適切なのか」を考えることです。
メタ認知を応用したSTP分析プロンプトは以下のようになります。
関連記事:メタ認知プロンプト(MP)でChatGPTの能力を向上させる手法を例文付きで紹介!
#前提:
あなたは過去3,000社のマーケティング支援を行なってきた優秀なマーケティングコンサルタントです。
#指示:
以下の{企業} の{新商品} についてSTP分析を行なってください。
その後自分の回答を再考して、再び出力してください。
最後に再考した出力を自己評価してください。
{出力フォーマット} に従って出力してください。
注釈や繰り返しは不要です。結果のみ出力してください。
#出力フォーマット:
S(セグメンテーション):
T(ターゲット市場):
P(ポジショニング):
再考内容:
再考後のS(セグメンテーション):
再考後のT(ターゲット市場):
再考後のP(ポジショニング):
自己評価:
#企業:
"""
(ここに入力)
"""
#新商品:"ここに入力"
S(セグメンテーション):
- 業種別: 金融、小売、製造、サービス業
- 企業規模別: 中小企業、大企業
- 技術ニーズ別: データ分析、顧客対応自動化、プロセス効率化
T(ターゲット市場):
- 業種別: 小売、サービス業
- 企業規模別: 中小企業
- 技術ニーズ別: 顧客対応自動化、プロセス効率化
P(ポジショニング):
- 株式会社 翔風イノベーションズのAIによる顧客対応システムは、顧客対応の自動化と効率化を求める小売業とサービス業の中小企業向けに最適化されたソリューションとして位置付ける。高度なAI技術を活用し、企業が提供するサービスの品質向上とコスト削減を実現します。
再考内容:
- ターゲット市場の更なる具体化
- 業種別セグメンテーションの精緻化
- ポジショニングの差別化要因の強調
再考後のS(セグメンテーション):
- 業種別: 小売、サービス業、Eコマース
- 企業規模別: 中小企業、スタートアップ
- 技術ニーズ別: 顧客対応の質の向上、顧客エンゲージメントの強化、プロセス効率化
再考後のT(ターゲット市場):
- 業種別: Eコマース、サービス業
- 企業規模別: スタートアップ、中小企業
- 技術ニーズ別: 顧客エンゲージメントの強化、プロセス効率化
再考後のP(ポジショニング):
- 株式会社 翔風イノベーションズのAIによる顧客対応システムは、特にEコマースとサービス業のスタートアップおよび中小企業を対象に、顧客エンゲージメントと対応の質を向上させることに特化したソリューションとして位置付ける。このシステムは、顧客満足度の向上と同時に、オペレーションの効率化を図ることができる点で競合と差別化されます。
自己評価:
プロンプトパーク(GPT-4)
再考プロセスを通じて、より明確かつ具体的なターゲット市場へのフォーカスを確立しました。Eコマースとサービス業のスタートアップおよび中小企業は、顧客対応の自動化と効率化によって大きなメリットを得ることができるセグメントです。ポジショニングの再考では、顧客エンゲージメントの向上という差別化要因を強調することで、競合他社との明確な差別化を図ることができました。このアプローチは、市場のニーズに密接に合致しており、提案されたターゲット市場における成功の可能性を高めるものと評価します。
2種類の回答が得られる時点でメリットですが、精度もより現実的なものとなっています。
欠点は回答が異様に長くなることです。
まとめ
STP分析は、マーケティング戦略を成功させるための重要なフレームワークです。
メリットと注意点を理解した上で、自社の状況に合わせて活用することで、効果的なマーケティング活動を行うことができます。
このようなプロンプトが沢山ある「プロンプトパーク」をぜひご利用ください。