マルチモーダルAIとは?わかりやすく解説!
近年、AI(Artificial Intelligence、人工知能)の発展には目覚ましいものがあります。
その中でも、最近になって注目を集めているのが「マルチモーダルAI」です。
テキスト・音声・画像・動画など複数の異なる要素を同時に処理できる強力なAI技術として、幅広い分野での活用が期待されています。
GoogleのGemini、OpenAIのSoraの登場でかなり現実味が増してきました。
では、マルチモーダルAIとは具体的に何なのでしょうか。
今回はこの注目の技術について、わかりやすく解説します。
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INDEX
マルチモーダルAIの定義

マルチモーダルAIとは、「マルチモーダル(複数種類の情報)」を扱うAIのことです。
マルチモーダルAIとは、テキスト、音声、画像、動画、センサー情報など、2つ以上の異なる種類の情報(モダリティ:modality)を収集し、それらを統合して処理する人工知能(AI)システムです。
モーダル(modality)とは、モダリティともいい、知覚様式を表す専門用語です。
人間は視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚といった五感から様々な情報を得ていますが、これをAIに置き換え、AIが複数の情報を組み合わせながら高度な推論や処理を実行できるように考えられたものがマルチモーダルAIです。
マルチモーダルではないAIは、テキストデータのみや画像データのみなど、単一のモダリティの情報しか扱えません。画像生成や音楽生成、テキスト生成などです。
一方、マルチモーダルAIは、異なるモダリティの情報を組み合わせることで、より豊かで効率的な情報処理が可能になります。
例えば従来はAIで動画を作成しようとしたら、生成した画像を動画に変換し、生成した音楽を動画に載せるという手法をとっていましたが、単一のAIで可能になると期待されています。
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マルチモーダルAIに期待されていること
マルチモーダルAIは、複数種類の情報処理を実現できるため、様々な分野での活用が期待されています。
例えば、以下のようなことができます。
- 画像とテキストの組み合わせ
- 画像の説明文を自動生成
- 画像から商品を検索
- 音声とテキストの組み合わせ
- 音声通話の文字起こし
- リアルタイム翻訳
- 画像と音声とテキストの組み合わせ
- 動画の内容を理解し、要約する
- 映画の字幕を自動生成
具体的な活用例としては、以下のようなものがあります。
- 医療
- 医療画像から病変を検出
- 患者の症状を音声で入力し、診断支援
- 製造
- 製品検査の自動化
- 生産ラインの異常検知
- 教育
- 個々の学習者に合わせた教材を自動生成
- オンライン学習の質を向上
- エンターテイメント
- より没入感のあるゲームやVR体験を提供
- 音楽や映像作品の自動生成
従来のAIはテキストデータや画像データ、音声データといった単一のモダリティの情報に特化して処理を行う「シングルモーダルAI」が一般的でしたが、マルチモーダルAIは、従来のAIの発展形と位置づけられます。
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マルチモーダルAIで実現しそうな事例
マルチモーダルAIは異なるモダリティのデータを結び付けることで、高度で複雑な推論を行います。
それにより、生成以外にも、一例ですが次のようなことが可能になると期待されています。
自動運転技術の精度向上
カメラやセンサー等の膨大な情報をリアルタイムに処理して、交通状況を的確に把握し、誤判断のリスクを軽減できるかもしれません。
医療診断の補助
CT画像などのデータと患者カルテのテキストデータを組み合わせて分析し、医師の診断を高度にサポートすることが可能になります。
防犯監視カメラの高度化
カメラ映像から特定人物を抽出したり、異常行動をリアルタイムに検知することができます。
マーケティング分野への応用
テキスト情報だけでなく商品画像や購買データなども含めて分析を行い、精度の高いレコメンドを提示可能になります。
マルチモーダルLLMとマルチモーダルAIとの違い

マルチモーダルAIの活躍が期待される中「マルチモーダルLLM」という言葉もあります。
実際に使う上では、あまり違いはないと予想されますが、ここでは定義に当てはめて違いを解説します。
LLMと生成AIの違い
LLM(大規模言語モデル)は元々、テキストから次のテキストを生成するモデルのことを言います。
一方で、テキストから他のもの(主に画像)を生成するAIを生成AI(Generative AI)と言います。
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しかし、現在言葉の違いはあまりなくなってきました。
元々LLMはテキストでしか返答してこなかったし、画像生成AIは画像でしか返答してきませんでした。
しかし、ChatGPTがAll Toolsの機能を搭載した頃、つまりDALL-E3を併せ持ってテキスト生成と画像生成の出し分けが同時にできた頃から違いはほぼないと思っていいでしょう。
プロンプト(AIへの指示や質問)の内容に応じて生成するのが画像なのかテキストなのかを判断するようになりました。
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マルチモーダルLLMとマルチモーダルAIの違い
上述の通り、LLMに機能が追加されていくような進化をしてきているので、マルチモーダルLLMとマルチモーダルAIに違いはほぼないと思われます。
例えば、Text to Image(テキストから画像を生成)、Image to Text(画像からテキストを生成)などが生成AIのできることでした。
Image to Imageももうすでに実現していますが、画像をどう変えればいいのかはテキストでの指示です。
つまりマルチモーダルAIにはある程度テキストを理解する機能は必要となるでしょう。
LLMとしてどのモデルを採用するのかの違いはあると思いますが、LLMとしての機能はマルチモーダルAIに搭載されているという理屈です。
マルチモーダルAIの発達による懸念点

AIに限らず技術の進歩にはデメリットや懸念点はあります。マルチモーダルAIにはAIとほぼ同じ懸念点が挙げられています。
従って、対策もほぼ同様の対策になりますが、AIの性能がいい分対策に関してもレベルの高い対策が求められるでしょう。
プライバシーの侵害
マルチモーダルAIは、個人の顔画像や音声データなども扱うことができるので、不正に使用された場合、個人のプライバシーが侵害されるリスクがあります。
特に、顔認識技術や音声認識技術は、個人を特定するのに十分な情報を含んでおり、これらのデータが不正に収集または利用される可能性があります。
データバイアスと不公平性
マルチモーダルAIの学習プロセスは、使用されるデータセットに依存しています。もしデータセットにバイアスが存在する場合、AIもまた偏った判断を下すことになります。
例えば、特定の人種や性別に偏った画像データを学習したAIは、それらのグループに対して不公平な扱いをする可能性がありますが、AIの進歩に伴って散々議論されてきたものでもあります。
誤情報、フェイクニュースの拡散
マルチモーダルAIは、テキスト、画像、音声など複数の情報源から情報を組み合わせることができますが、これがよりリアリティのある誤情報の生成に利用される可能性があります。
雇用への影響
マルチモーダルAIの導入により、多くの職種で自動化が進み、人間による仕事が減少する可能性があります。
しかし、この事も新技術が誕生する度に言われている事です。ただし、働き方は多くの業種で変わる可能性があります。
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マルチモーダルAIの課題と今後の展望

マルチモーダルAIによってできることは多く、技術的にはまだまだ高い伸びしろが見込めます。
一方で、下記のような解決すべき課題もあります。
異なるモダリティ間でのデータのすり合わせ
テキスト、音声、画像など種類が異なるデータをAIがシームレスに処理できるようにするには、これらのデータを一貫した形に変換できる形式を用意する必要があります。
学習用データの収集と加工コスト
高性能なマルチモーダルAIを開発するには、多種多様な組み合わせの大規模な学習データを用意しなければなりません。
データ収集やアノテーション(データへの付帯情報の付与)に手間とコストがかかります。
計算処理にかかる負荷
多量のマルチモーダルなデータを瞬時に処理するためには、膨大な計算リソースが必要となります。
しかし、上記のような課題は、今後の技術的発展とともに解決が期待される部分も多く、マルチモーダルAIの利活用領域は益々広がっていくと予測されます。
まとめ
マルチモーダルAIは、異なる種類の情報を組み合わせて処理することで、AIの推論と分析の能力を大幅に飛躍させます。
この革新的な技術は、今後もさまざまな分野でイノベーションを生み出す源泉になると考えられています。
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